野学校HP〔開設:2021年6月1日〕
※講演内容は、授業の案内チラシから、抜粋いたしました。
プロフィールは授業当時のものですので、ご了承ください。
野学校 授業の記録(第三十一回~)
第三十一回
2020年2月22日(土) 14:00~ 小山台会館
講 師:林良博(はやしよしひろ)さん(独立行政法人)国立科学博物館・館長
テーマ:「いま科学系博物館がおもしろい」
〔お話の内容〕
わたしは東京大学に在職中、2回、合計7年にわたって付属の総合研究博物館の館長を務めました。東京大学は日本の科学研究をリードする役割を担っていますので、附属の総合研究博物館は多くの人びとに来館してもらうことよりも、日本の博物館を高めるための研究と実験展示を行うことが主目的でした。一方、6年10か月前に就任した国立科学博物館(科博)は、日本に一つしかない国立の科学系博物館(Nature and Science)ですので、「科学や自然が好きな人たちが集まる」だけでなく、「誰もが新しい発見や驚きに出会える」博物館でなければなりません。すでに先人の努力によって、世界一美しい常設展示が整備されていましたので、できるかぎり来館者が楽しく観覧できる展示場の整備に努めました。またマスメディアと共催する特別展示や、科博の研究成果に基づいた企画展示は、おもしろく、新しい発見や驚きに出会えるように皆と相談しました。こうした努力が実ったのでしょうか。科博は日本で一番多くの来館者をお迎えするミュージアム(博物館・美術館)になりましたので、その経緯を紹介します。
〔講師プロフィール〕
1946年広島県生まれ、富山県育ち。1969年東京大学農学部卒、1975年東京大学大学院農学研究科博士課程修了。東京大学助手、助教授、ハーバード大学客員研究員、コーネル大学客員助教授、ラプラタ大学客員教授などを経て、1990年東京大学農学部教授。その後、総合研究博物館館長、研究科長、農学部長、副学長を歴任。2010~2017年(公財)山階鳥類研究所長。2013年より現職。第20、21期日本学術会議会員。著書・監修は専門書のほかに「ふるさと資源の再発見」、「ヒトと動物」、「鳥の絶滅危惧種図鑑」等
第三十二回
2021年7月31日(土) 14:00~ オンライン
講 師:花輪伸一(はなわしんいち)さん (野学校校長)
テーマ:「沖縄では軍事基地が自然環境と住民生活を脅かしている」
〔お話の内容〕
沖縄の島々は生物多様性に富み、固有種や絶滅危惧種が多く、世界的に見ても自然保護上の重要地域である。しかし、米軍基地が集中し、さらに辺野古新基地や高江ヘリパッドの建設、軍事訓練で、豊かな海や森が破壊され、住民生活が脅かされている。また、自衛隊の南西シフトが進み、島々での基地建設や部隊の配備で、再び沖縄戦の悲惨さが繰り返されるのではないかと住民の不安が高まっている。沖縄の生物多様性、辺野古・高江、自衛隊配備の現状について考える。
〔講師プロフィール〕
1949年仙台市生まれ。東北大学、東京農工大学で鳥類や哺乳類の調査研究を行う。日本野鳥の会、WWFジャパンに勤務し、シギ・チドリ類や干潟・浅海域、沖縄の野生生物とその生息地の調査や保護、教育などの活動を行う。2011年に退職し、沖縄の軍事基地問題に主に自然保護の面から取り組む。
第三十三回
2021年11月20日(土) 14:00~ オンライン
講 師:福留千穂(ふくどめちほ)さん (屋久島町公認ガイド)
テーマ:「屋久島の自然とエコツアー」
〔お話の内容〕
屋久島は本土最南端の佐多岬から南南西に約60㎞離れた海上にある。1993年に日本で初めて白神山地とともに世界自然遺産に登録された。島の周りは黒潮が流れ、温暖な気候である。九州最高峰の宮之浦岳をはじめ、1000mを超す山がいくつもそびえる山岳島であるため、標高によって植生が変化する。海岸から山頂までの植生の垂直分布が途切れることなく続いていることが世界自然遺産登録の理由の一つである。現在、屋久島への観光客は減少傾向であるが、それでも屋久島の自然を体験しにたくさんの人が訪れる。縄文杉だけではない、たくさんの魅力ある自然をエコツアーガイドの視点で紹介していきたい。
〔講師プロフィール〕
鹿児島県出身で短大卒業後、県内の小・中学校で養護教諭として勤務。ガイドの仕事に興味を持ち、2014年3月に退職し屋久島へ移住。屋久島野外活動総合センターで研修を受け、現在、エコツアーガイドとして勤務している。野鳥について関心を持ち始めたのは4~5年ぐらい前からで、身近な場所を散歩しながら鳥を見る「とりさんぽ」で野鳥を見て覚えてきている。まだまだ勉強中。
第三十四回
2022年2月19日(土) 16:00~ オンライン
講 師:酒井香織(さかいかおり)さん (バチカン博物館公認ガイド)
テーマ:バチカン・サンピエトロ大聖堂に住む動物たちーキリスト教美術の中の動物ー
〔お話の内容〕
今回の講座では、私の職場でもあるサンピエトロ大聖堂に住む動物たちを紹介します。ハイライトは、私がイタリアの大学で書いた卒論「バチカン・サンピエトロ大聖堂のフィラレーテによるブロンズの扉の図像の原典」です。フィラレーテとは、ルネッサンス発祥の地フィレンツェ出身の彫刻家の名前で、1445年に完成したこの扉は、ローマで最初のルネッサンス美術ともいわれています。フィラレーテはこの扉に聖人や教皇のレリーフに混ざって、さまざまな動物たちを住まわせました。どこにどんな動物が隠れているのか、どんな意味があるのか、アニマル・ウォッチングしていきたいと思います!
〔講師プロフィール〕
東京・葛飾出身。小学生の時、岩本久則さんの「野鳥観察手帳」を読んで、日本野鳥の会入会。大井野鳥公園のボランティアなど経て、日本野鳥の会バードショップでアルバイト、後に嘱託職員として勤務。2004年からローマ在住。LUMSAで文化財保護研究の学位と教会財研究のマスター取得、教皇庁立聖アンセルモ大学典礼科観光ガイド高等専門コース修了。 現在、巡礼旅行パラダイス主催オンライン講座「1950年聖年にバチカンで開催された宣教美術展とそれに参加した日本人画家たち」に毎月登壇。バチカン博物館公認ガイド、バチカン・ネクロポリス専門ガイド、ローマ県及びヴィテルボ県公認ガイド、イタリア観光通訳。協力:村上恭子さん(巡礼旅行パラダイス)
第三十五回
2022年7月2日(土) 14:00~ オンライン
講 師:長井弘勝(ながいひろかつ)さん (出版社退職後、東洋など多方面志向)
テーマ:ボクの中国ゴッコ、そして鳥
〔お話の内容〕
鳥好き、中国生活文化好きだけど、研究者というにはイマイチ。そこらで「ゴッコ」を楽しんでいる愛好家です。で、お話しするのは、「ゴッコ」とその周辺のことを 順不同で……
・中国のバードウオッチング事情の今昔──前史:おいしい鳥祭と放生会の時代 ・60歳過ぎ て中国に語学留したのはなぜ? ・バーダーたちと交流って、中国の一般人と知り合う機会はどうつくる? ・外国人も近間/遠出探鳥会に参加できる? ・北京の探鳥地ってどんな?──市内に巨木の森あり、近郊に深山幽谷あり ・鳥が出てくる漢詩をめぐって ・「邯鄲の夢」をむすぶ鳥たち──陶片(トーヘン)ボクの愉しみ などなど ……付「ヒマラヤのニジキジ」など(時間があれば)
〔講師プロフィール〕
1944年生まれ。早大卒、専攻は東洋史。卒論は7-9世紀のネパールについて。30代半ばにして鳥見に目覚め、さらには魚、鯨へと動物行動観察のスパンを広げる。書籍、雑誌の編集者として出版社勤務ののち、還暦前後から東洋志向に回帰。とびとびに4回にわたって中国各地に語学留学。勉強はそっちのけで、中国各地を突撃旅行。その後も、仏教美術や東洋陶磁を追って、中国各地はもちろん、インド、ネパール、チベット、インドネシアの各地、さらにはパリ、ロンドン、オックスフォードまでウロウロ。旅のついでにちょっとだけ鳥見する<ついで バーダー>も 続けている。一時期、日本野鳥の会会員誌『野鳥』の編集委員長を務めたことも。
第三十六回
2023年1月28日(土) 14:00~ オンライン
講 師:藪内竜太(やぶうちりゅうた)さん(薮内正幸美術館館長)
テーマ:好きこそ物の上手なれ~動物画家薮内正幸について~
〔お話の内容〕
動物・野鳥画家として図鑑や辞典、絵本や教科書なども手掛けた薮内正幸ですが、生涯で画を習ったことはありません。また基本的に描いた動物や野鳥の元となったポーズの資料もありません。つまり全くの独学であり、さらには写真等を見ることなくどんなポーズでも描きあげていました。言ってみれば想像図です(もちろん、模様や羽の枚数等は資料によりチェックはします)。そんな話を当館ですると必ず聞かれます、「え!?どういうこと!?」。また、薮内の子供時代の画を展示すると「やっぱり天才の人は子供の頃から違うわねぇ。この歳ですでにこんな画を描けていたのね」と。
私からすれば、薮内は決して天才的な画描きではないと思っています。ただ、他の人と比べて子供の頃から有り得ないほどの数の画を描いてきました。朝から晩まで描いていました。それこそ食事をしながらも描いている時期もありました。それだけ描き続ければ、下手なわけはありません。誰だって上手になると思います。ただ、普通はそれだけの数は描けないんですよね。やり続けられないんですよね。薮内がそれだけ描き続けることができたのは、大好きな動物、野鳥を少しでもカッコ良く描きたいから。だから画描きとしては天才ではないと思いますが、あえて天才という言葉を使うなら「天才的に動物が好きだった」んだと思います。
どんなことでも時間を掛けねば、繰り返し数をこなさなければ身につきません。そしてそれだけ継続できるのは、好きなことじゃないと無理だと思います。まさに「好きこそ物の上手なれ」。そして薮内は「親に感謝する」とも言っていました。「いつまで好きなことばっかりやってるの!勉強は?」の一言でやめさせていれば、当然上達することはなくなり、その後の人生も違うものとなっていたはずです。つまり子の可能性を伸ばすも摘むも身近な大人の理解次第かな、と。
スピーディであり即戦力であり失敗も許されない今の時代。けど、そのことによって大事なことが忘れられちゃっているのかな・・という気がします。何でもかんでも手間、時間を掛けるわけにはいかないでしょうが、好きなことくらいじっくりそして繰り返し、さらに遠回りでもいいのかな、と思います。
〔講師プロフィール〕
1969年東京生まれ。父は動物画家である薮内正幸(1940~2000)、母は福音館書店の編集者(児童書担当)を経て、フリーライターでありタイ料理研究家でもあった戸田杏子(本名:薮内幸枝 1941~2006)。大学卒業後は会社勤務するものの2000年の正幸死去に伴い退社、以後遺された1万点以上もの原画の管理を専属で行う。
2001年 美術館設立に向けて学芸員資格を取得。2003年 有限会社藪内正幸美術館を設立。
2004年 薮内正幸美術館を山梨県北杜市白州町(当時は北巨摩郡白州町)に開館。現在は館長を務め、各地で開催される原画展の企画から講演までを行う。山梨県北杜市白州町在住。
薮内正幸美術館 https://yabuuchi-art.jp/
第三十七回
2023年7月8日(土) 14:00~ 小山台会館
講 師:中村桂子(なかむらけいこ)さん(JT生命誌研究館名誉館長)
テーマ:多様な生きものの一つである人間~生命誌という新しい知を
〔お話の内容〕
人間は生きものであるという当たりまえのことを基本に生きる社会を作りたいと考えて、生命誌という新しい知を創ってきました。チョウやハチなど身近な小さな生きものが語る物語に耳を傾け、多様な生きものの中での生き方を考えます。
〔講師プロフィール〕
1936年東京生れ。生命誌研究者。東京大学理学部化学科卒。同大学院生物化学博士課程修了。理学博士。三菱化成生命科学研究所人間・自然研究部長、早稲田大学人間科学部教授、大阪大学連携大学院教授など歴任。「人間は生きものであり、自然の一部」という事実を基本に生命論的世界観を持つ知として「生命誌」を構想。1993年「JT生命誌研究館」を創設し副館長、2002年に館長、2020年名誉館長。著書に『科学者が人間であること』(岩波新書)、『生命誌とは何か』(講談社文庫)、『ふつうのおんなの子のちから』(集英社クリエイティブ)、『中村桂子コレクションいのち愛づる生命誌 全8巻』(藤原書店)、『老いを愛づる』(中公新書ラクレ)など。
第三十八回
2023年10月7日(土) 14:00~ 小山台会館
講 師:唐沢孝一(からさわこういち)さん(都市鳥研究会会長)
テーマ:東京を舞台に、人とカラス、猛禽、ツバメの栄枯盛衰
〔お話の内容〕
東京とその周辺の都市環境に生息する鳥類の生態についてお話くださいます。6月に出版なさった『都会の鳥の生態学』(中公新書)では語れなかったことも含めて、カラスと猛禽を切り口に、都市とは何か、都会人とは何か、また、人とツバメ・スズメとの関わり合いなどについて、わかりやすく解説いただきます。間は生きものであるという当たりまえのことを基本に生きる社会を作りたいと考えて、生命誌という新しい知を創ってきました。チョウやハチなど身近な小さな生きものが語る物語に耳を傾け、多様な生きものの中での生き方を考えます。
〔講師プロフィール〕
群馬県生まれ。都立高校の生物教師のかたわら都市鳥を研究。都市鳥研究会代表、日本鳥学会評議員などを経て、現在はNPO法人自然観察大学学長。執筆や講演を行い、自然観察会の講師を務めていらっしゃいます。
第三十九回
2024年5月11日(土) 14:00~ 小山台会館
講 師:樋口広芳(ひぐちひろよし)さん
テーマ:世界の自然と自然、人と人をつなぐ渡り鳥
〔お話の内容〕
鳥たちの多くは、毎年、秋に何千キロ、あるいは何万キロにも及ぶ渡りをします。その旅の途中、何か所かで翼を休め、食物をとって越冬地へと向かいます。そして、春になるとまた、子育てをする繁殖地へと戻ってきます。こうした渡りの様子が、近年、科学技術の発達によって目に見える形で明らかになってきています。今回は、最近の研究によって明らかになったコムクドリ、サシバ、ハチクマ、カンムリウミスズメ、オオハクチョウ、ハリオアマツバメなどのおどろきの渡りの様子を、パワーポイントのアニメーションやビデオ映像などを使ってお見せします。また、これらの渡り鳥が、世界各地の人と人をも結びつけていることを紹介します。
〔講師プロフィール〕
1948年横浜生まれ。東京大学名誉教授、慶應義塾大学訪問教授。東京大学大学院博士課程修了。米国ミシガン大学動物学博物館・客員研究員、(財)日本野鳥の会・研究センター所長、東京大学大学院教授を歴任。専門は鳥類学、生態学。日本鳥学会元会長。主著に、「鳥たちの旅―渡り鳥の衛星追跡―」(NHK出版)、「生命(いのち)にぎわう青い星―生物の多様性と私たちのくらしー」(化学同人社)、「鳥・人・自然―いのちのにぎわいを求めて―」(東京大学出版)、「鳥ってすごい!」(山と渓谷社)、ニュースなカラス、観察奮闘記」(文一総合出版)。
第四十回
2024年8月6日(火) 14:00~ オンライン
講 師:湊 秋作(みなとしゅうさく)さん
テーマ:田んぼの生物多様性を知る、楽しむ、考える
〔お話の内容〕
田んぼは農家がお米を作るところ。そして、カエル、トンボ、ザリガニ、 5000種以上の生物の棲む生物多様性の宝庫でもあります。それをヒト:農家が知らずに創ってきました。ヒトは自然を破壊する位置にあると認識されています。しかし、田んぼでは、ヒトは生物多様性の「創造主」なのでするか縄文時代後期ごろから、自然と文化、そして社会を育んできた田んぼ。その豊かさを再発見し、生きものみんなで支えあう未来を考えます。
〔講師プロフィール〕
1952年和歌山県生まれ。小学校教諭として24年間田んぼを用いた環境教育を展開。教育学修士の学位を得る。また、ライフワークのヤマネの研究により、理学博士号を取得。現在、ヤマネ・いきもの研究所 代表理事 アニマルパスウェイと野生生物の会会長 ニホンヤマネ保護研究グループ会長 山梨県文化財保護審議会委員(動物学) 山梨県希少野生動植物保護専門員 関西学院大学SDGs・生物多様性研究センター客員研究員。【主な著書】「田んぼの楽校」(山と渓谷社) 「田んぼの生きもの図鑑」「『田んぼの学校』まなび編、あそび編」(農山漁村文化協会)「ヤマネはねぼすけ?」(福音館書店) 「ヤマネって知ってる? ヤマネおもしろ観察記」(築地書館) 「ヤマネのすむ森」(学研教育出版)
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