野学校授業の記録(第二十一回~三十回)



※講演内容は、授業の案内チラシから、抜粋いたしました。 

 プロフィールは授業当時のものですので、ご了承ください。


野学校 授業の記録(第二十一回~第三十回)

 

第二十一回

2017114日(土)  14001650  小山台会館

講師 :水野憲一(みずのけんいち)さん(日本自然保護協会監事)

テーマ:「日本の自然保護運動を振り返って」

〔お話の内要〕

1949年に尾瀬ヶ原湿原を水没させるダム計画への反対運動が始まり、1951年に日本自然保護協会の誕生につながりました。その後に起きた様々な問題(埋め立て、ブナ林、サンゴ礁、里山など)やエコツーリズムなどの自然保護運動の歴史について、失敗談や裏話しを含めてお話しいただきます。また、メディアの役割についてのお考えも述べていただきます。

後半は会場の皆様からの質問にもお答えいただく予定です。

〔講師プロフィール〕

1934年大阪生まれ。1959年からNHKに勤務し「自然のアルバム」「ウォッチング」「地球ファミリー」などを手がける。1974年から日本自然保護協会理事、野生動物保護委員などさまざまな委員も担当し、『自然保護NGO半世紀のあゆみ上・下』(2002年平凡社)を編纂。環境ジャーナリストの会の中心メンバーとして、環境問題の啓蒙活動にも携わり、NPO法人「環境テレビトラストジャパン」専務理事などを務める。

 

第二十二回

2018217日(土)  14001650   小山台会館

講 師: 山下 國廣(やました くにひろ)さん ( 獣医師、犬のしつけ指導・問題行動修正を行う『軽井沢ドッグビヘイビア』主宰)

テーマ:「犬のしつけの真実と 犬を通した野生動物との共存」

〔お話の内容〕
・犬のしつけの常識と真実

・「犬は家族に順位をつけて常に第一位を狙っている」というのは本当か?
・犬の行動の原理とその応用としてのしつけ(レスポンデント条件付け,オペラント条件付け、シェイピング,フラッディング,等々)について。
・犬のしつけをめぐる二つの立場   ・犬を通じた野生動物との共存
・野生鳥獣に関わる作業犬のジャンル  ・獣害対策犬の活用方法  など

〔講師プロフィール〕

1953年東京都三鷹市生まれ。日本獣医畜産大学(現日本獣医生命科学大学)卒。在学中は日獣野鳥の会(サークル)に所属。卒業後,千葉県や長野県で農業団体所属の家畜診療獣医師として,おもに乳牛の診療・飼育管理指導を行う。

甲斐犬を飼いトレーニングし、訓練競技会やドッグスポーツにチャレンジするのをきっかけに、犬の育成指導を専門にするようになる。2005年退職し独立開業。

救助犬や、アライグマ、ハクビシン、シカ、クマなどの対策犬、里守り犬などの育成指導のほか、家庭犬のしつけ指導も行っている。NPO法人 生物多様性研究所あーすわーむ理事。獣医動物行動研究会所属。日本ペットドッグトレーナーズ協会所属。

 

第二十三回

2018421日(土)  1400 ~ 1650   小山台会館

講 師:福本学(ふくもとまなぶ)さん(医学博士東京医科大学特任教授東北大学名誉教授)

テーマ:「放射線とヒト&原発事故をめぐるあれこれ」

〔お話の内容〕

放射線は生物に様々な作用をします。放射線が一度に大量に当たると細胞はやがて死にます(確定的影響)。少ない量では遺伝子(DNA)に変異などを起こし、時を経てがんを発症することがあります(確率的影響)。今回はこれらの過程をわかりやすく説明します。また、放射線と一言で言っても被ばくの仕方で及ぼす影響は違います。その辺の研究の難しさもご理解いただけると思います。3.11の地震の際には東北にいて直接被害を受けました。その後の原発事故による放射能の拡散が生物にどのような変化をもたらしたかの調査も行っています。試料の確保、アーカイブの構築などの苦労話もお聴きください。

〔講師プロフィール〕

1950年生まれ。京都大学医学部・同大学院卒業(1981年)。その後米国イリノイ大学シカゴ校遺伝学センターに留学し、ヒトにおける発がんのメカニズムや、抗がん剤の効かないがん細胞などについて研究する。

京都大学医学部を経て、1998年東北大学加齢研究所教授(病態臓器構築研究分野)。2016年東北大学名誉教授・客員教授。東京医科大学特任教授。さまざまな学会の理事などを歴任。特に放射性元素である二酸化トリウムを用いた血液造影剤トロトラストによる発がん機構の解析などの功績に対して日本病理学賞・放射線影響協会功績賞などを受賞。

 

第二十四回

20186 2日(土)  1400  1650 小山台会館

岩本 久則 (いわもと ひさのり)さん( 漫画家 野学校美術担当)

テーマ 「昼下がりの漫画学」

〔お話の内容〕

一章「漫画って?」・・世界の名作漫画

二章「杉作日本漫画の夜明けだよー」・・今の漫画は幕末から。それを誰が今に繋げたのか/日本人最初の漫画家と言われる男/シーボルトが現代漫画のルーツに?

三章「戦争と漫画(漫画家)たち」・・戦に参加した漫画家、参加しなかった漫画家/伝単という出版物/漫画家は戦争中何をしていたか/社会主義と漫画

四章「漫画集団な人たち」・・オバQを描ける手塚治虫さん/土下座した赤塚不二夫さん/アメリカ大統領に送った原稿料の請求書(現物)/毛筆名人チンコロ姐ちゃん

 

 

第二十五回

2018 10  6 日(土)     14    00    16 50  小山台会館

  西海 功(にしうみ いさお)さん国立科学博物館研究主幹 九州大学大学院客員教授)

テーマ:     DNA  からみる鳥の系統進化と分類」

 〔お話の内容〕

第1章 鳥類  DNA  バーコーディング

  ・種同定手法としての  DNA  バーコード・急速な種分化を遂げたグループ・交雑、および交雑による種分化・隠蔽種の候補を見つける・  DNA  分類学と生物学的種

第2章 島の鳥と大陸の鳥との関係

  ・海洋島での適応放散  ・大陸島での  Reverse Colonization  (逆移入)

  ・日本列島は鳥の種の生産地?

第3章 日本の鳥の種分類

・日本固有種は何種?—日本鳥類目録と  IOC Check-list    

・日本だけが認めていない固有種としてのニホンキジ  

・3種に分けられたメボソムシクイ種群には問題あり?

第4章 世界の鳥の系統と分類

  ・形態より  DNA  を優先する系統分類  ・分類順がもつ意味が変わった?

  ・鳥の分子系統情報を知るには

 〔講師プロフィール〕

1967   年生まれ。大阪市立大学卒業、同大学院中退(  1996  年)。博士(理学)(京都大学  1999  年)。1996   年から国立科学博物館動物研究部に勤務し、  2010  年より九州大学大学院地球社会統合科学府客員准教授、2018  年より同客員教授を兼任。日本の鳥学に  DNA  分析手法を取り入れた先駆者。繁殖生態、集団構造、   種分化の研究をおこなっている。   2005   年から鳥類   DNA   バーコード会議運営委員・ユーラシア作業部会副議長となり、同   2005   年から日本での鳥類   DNA   バーコードプロジェクトを主導している。   2006   年から国際鳥学委員、   2016      17   年日本鳥学会会長。

  

第二十六回

2018121日(土)  14001650  小山台会館

講 師:多田多恵子(ただたえこ)さん(理学博士立教大学、国際基督教大学、東京農工大学非常勤講師)

テーマ:「植物と動物のさまざまな関係:送粉、種子散布、被食防御」

〔お話の内容〕

植物は土に根を張って動けませんが、一生に2度、旅をします。花のときと、種子のときです。植物は花粉を運ばせるために様々な工夫をしています。花はそれぞれのターゲットとコンセプトでお客さんを呼び込みます。明るいオープンなファミレスもあれば、リピーター狙いの会員制レストランもあり、特殊な客層にターゲットを絞ったエスニック料理店、客を騙して誘い込む悪徳バー、真っ赤な鳥さんレストランや、夜間営業のコウモリレストランもあったりします。種子たちの旅もさまざまです。風や水の力を利用するだけでなく、ごちそうにくるまって鳥や動物のおなかに入りこむものがあれば、おまけをつけたり、貯蔵癖をうまく利用したり・・。でも、植物と動物の関係はウィンウィンだけではありません。食うものと喰われるものの厳しい関係がそこには存在しています。植物は動物とはまた違う方法で、戦いながら生きています。当日は実物の花や葉や実も観察しますので、あればルーペやカメラなどをご持参ください。

〔講師プロフィール〕

東京生まれ。東京大学卒、同大学院博士課程修了、理学博士。専門は植物生態学。介護を終えて子どもたちも成人し、今は夫と二人暮らし。大学で楽しく講義を行っているほか、一般向けにも観察会を開いて、植物の生き残り戦略や虫や鳥や動物との関係をいつもワクワク調べている。NHKラジオ夏休み子ども電話相談に植物の先生として出演している。著書に「ようこそ!花のレストラン」(少年写真新聞社)、「図鑑NEO花」(小学館)、「美しき小さな雑草の花図鑑」(山と渓谷社)、「野に咲く花の生態図鑑」(河出書房新社)、「実とタネキャラクター図鑑」(誠文堂新光社)、「里山の花木ハンドブック」(NHK出版)など多数。

 

第二十七回

2019316日(土)  14001650  小山台会館

講 師:赤澤威(あかざわたける)さん(国際日本文化研究センター・総合研究大学院大学・高知工科大学名誉教授)

テーマ:「私とシリア、52年の歩み」

〔お話の内容〕

シリア?他の中東諸国、たとえばイラクやエジプト、トルコと比べると日本人にはなじみの薄い国かも知れません。そのシリア、各種メディアの世界に登場しない日はないといった今日です。ただ、報じられる内容は一面的です。その多くは、2011年に勃発した内戦以来、崩壊疲弊し続ける諸都市と地域社会、諸外国の思惑も絡む政治構図のもとで深まるばかりの混迷状態を伝えるものです。52年前1967年、西アジア調査団の隊員となり、爾来シリアをフィールドにネアンデルタール人()との出会いを追い続けた数十年、その歩みを振り返ってみます。遠目にはなかなか理解しがたいシリアの地、人や風土の魅力をネアンデルタール人の目からお話ししたい。たくさんのパワポ映像資料を観ていただきます。

・シリアとはどんなところ、その魅力・ネアンデルタールミッション

・シリア沙漠に消えた湖・ネアンデルタール人との出会いと復活

・シリアのこれから、われわれにできること

〔講師プロフィール〕

1938 11 9 日生まれ。 慶応義塾大学文学部卒。 東京大学大学院理学系研究科人類学専攻で鈴木尚教授、渡辺仁教授に師事。両教授のもとでネアンデルタール研究。 国立科学博物館人類研究部研究員、東京大学総合研究博物館教授をへて、国際日本文化研究センターと高知工科大学の教授を務めた。 1989-1992 年度重点領域研究「先史モンゴロイド」領域代表、2010-2014 年度新学術領域研究「ネアンデルタールとサピエンス交替劇の真相」領域代表。著書に『ネアンデルタール・ミッション』(2000 年、岩波書店) など

 

第二十八回

201961日(土)  14001650  小山台会館

講 師:大和田正人(おおわだまさと)さん。神奈川大学理学部生物科学科教務技術職員

テーマ:「穿孔貝のよもやま話」

〔お話の内容〕

食材として馴染み深い貝類は、実は進化の研究に大変適しています。それは、貝殻が化石に残りやすく、その形が生活様式を反映しているからです。今回は岩や木に穴をあけて、その穴の中に棲んでいる、穿孔貝(=穿孔性貝類)と呼ばれる貝類についてお話をします。特にイガイ科とニオガイ科の穿孔貝については、殻の形が穴をあけることにどのように適しているのか、そして、それがどのように進化してきたのかを詳しく解説します。

1.貝類全般について

2.穿孔性貝類について

3.イガイ科穿孔性貝類の適応形態と進化

4.ニオガイ科貝類の系統分類と進化

〔講師プロフィール〕

1971 年、東京都大田区生まれ。神奈川大学卒業、東京大学大学院博士課程単位取得退学の後、神奈川大学にて論文博士(理学)を取得。東京大学総合研究博物館協力研究員、神奈川大学総合理学研究所客員研究員、神奈川大学非常勤講師を経て、現在は神奈川大学で教務技術職員として勤務。専門は貝類の進化生物学。趣味はバードウォッチング。

 

第二十九回

2019921日(土)  14001650終了  小山台会館

講 師:矢島稔(やじまみのる)さん(ぐんま昆虫の森名誉園長)

テーマ:「昆虫の世界・・・観察を続けてわかること」

〔お話の内容〕

私は、旧制中学時代、一時は焼け野原と化した東京でアゲハチョウが卵からさなぎになるまで、食草の葉を28枚食べるなどを観察して記録しました。当時、昆虫学者の仕事は害虫や分類の研究で、身近な虫の生活史や環境との関係についてはデータさえありませんでした。そこで、市民に虫の生態を紹介する昆虫館の創設にたずさわり、身近な虫を調べ、それをわかりやすく解説する仕事をしてきました。今回は、これまで撮ってきた虫の写真を系統的に紹介し、昆虫についての考え方を生態的に理解いただきたいと思います。

〔講師プロフィール〕

1930 年、東京生まれ。東京学芸大学卒業。中学生より昆虫観察を開始。1961 東京都多摩動物公園に勤務し「昆虫園」を開設。64 月刊誌「インセクタリウム」創刊。87 多摩動物公園園長となり、翌年 「昆虫生態園」をオープン。99 年より群馬県立「ぐんま昆虫の森」園長(現在は名誉園長)。 1998 年「わたしの昆虫記①」で小学館児童出版文化賞受賞、2016 68 回日本放送協会 放送文化賞を受賞など、受賞や著書は多数。

 

第三十回

20191130日(土)  14001650  小山台会館

講 師:山本裕(やまもとゆたか)さん(公財)日本野鳥の会自然保護室チーフ

テーマ:「放射性物質による野鳥への影響_ツバメの白斑調査、及びカラ類の巣箱調査報告」

〔お話の内容〕

私は、東日本大震災以降、福島県内を中心に、原発事故による野鳥への影響の有無を調べてきました。今回は、特に、サギ類のコロニー、ツバメに起きた部分白化やヤマガラやシジュウカラの繁殖状況、野鳥への放射性物質の蓄積をテーマに、これまでの調査の途中経過をお知らせします。併せて、事故後の自然環境の変化や社会環境への影響、復興の様子についてもお伝えします。

〔講師プロフィール〕

1964年、山口県生まれ。1991年に日本野鳥の会に入局。広島、三宅島のサンクチュアリでレンジャーとして勤務し、2008年より自然保護室。モニタリングサイト1000や日本のマリーンIBA選定を担当後、現在は、放射性物質の鳥類への影響調査、海鳥の刺し網混獲対策や野外鳥類学論文集「Strix」の編集を担当している。