野学校授業の記録(第十一回~二十回)



※講演内容は、授業の案内チラシから、抜粋いたしました。 

 プロフィールは授業当時のものですので、ご了承ください。


野学校 授業の記録(第十一回~第二十回)

 

第十一回

2014126日(土) 13:30~16:20 大崎第一区民集会所・第 6 集会室

・講 国松 俊英(くにまつ としひで)さん

・テーマ : 「鳥類画家・小林重三 (こばやし しげかず) その生涯と仕事」

〔お話の内容〕

小林重三(こばやし しげかず)は大正から昭和の戦前・戦後に活躍した博物画家です。黒田・山階・清棲の日本三大鳥類図鑑をはじめ、多くの鳥類図鑑、研究書、一般書などに鳥の絵を描きました。小林は、日本鳥学会の出発とおなじ頃鳥類画を描きはじめ、日本の鳥学の発展に大きな貢献をしました。戦争で焼失し失われたと思われていた図鑑や研究書、掛図の多くの原画が園部浩一郎氏の努力によって見つかり、小林の仕事に新しい光があたろうとしています。

野学校の講演では、小林がどんなきっかけで鳥の絵を描くことになったのか、どのように鳥類画を描いていったのか、小林の生涯と仕事について語ります。

〔講師プロフィール〕

滋賀県に生まれる。同志社大学商学部卒業。日本児童文学者協会、日本野鳥の会会員。児童文学作家。童話や児童小説とともに、自然や野鳥を題材にした作品を書いている。鳥の文化史について深い関心を持っていて、鳥と人の関わりの研究を熱心に行っている。主な著書に『鳥を描き続けた男 鳥類画家・小林重三』(晶文社1996)はじめ、『宮沢賢治 鳥の世界』『星野道夫物語』『トキよ 未来へはばたけ』『スズメの大研究』などがある。

 

第十二回

201544日(土) 13:30~16:20  大崎第1区民集会所第1集会室

・講 新井浩司(あらい こうじ)さん

・テーマ : 「身近なハンター、クモの魅力と不思議」

〔お話の内容〕

鳥たちの子育てが始まる季節となりますが、クモの糸は巣材にもなるし、クモ自身も餌として重要です。生態系においては昆虫等の低次消費者の爆発的な繁殖を抑える役割を担っており、農地でも人家でもいわゆる害虫抑制の効果をもたらしています。

また、クモには単純な「面白さ」や「魅力」も有り、地上で最も繁栄した肉食動物であるため、その多彩且つ巧妙な捕食戦術が数々あります。今回はそれらを、実際に動画映像で御紹介したいと思っています。

〔講師プロフィール〕

1971 年東京都渋谷区生まれ。日本蜘蛛学会会員。東京蜘蛛談話会員。現在、研究団体やNPO等のイベント講師、環境アセスメント等の調査等も請け負っている。クモ生態動画映像集『Spider World』(自主制作)をはじめとした、クモの様々な生態映像の撮影、博物館等の企画展やTV、教育関係者等にも提供している。 最近の監修・写真提供は、NHK ダーウィンが来た!DVD ブック. 朝日新聞出版. 2011「一発必中ナゲナワグモ」。

 

第十三回

2015年7月25日(土) 13:30~16:20  小山台会館

・講 奈理子(おか なりこ)さん (山階鳥類研究所 上席研究員)

・テーマ : 「東京の今ここに在る危機―世界最大級の海鳥繁殖島とノネコ問題」

〔お話の内容〕

オオミズナギドリはアホウドリと親戚筋の、かつては伊豆諸島のほとんどの島で繁殖していた海鳥です。人による乱獲とイタチの導入で数が減り、最後の砦の一つで、しかも世界最大の繁殖地の御蔵島にも、危機迫ってきました。ノネコの島化現象が勃発したのです。オオミズナギドリの不思議な生態と、ノネコの激増で最大の危機に直面する御蔵島で始めたノネコ里親作戦をお話します。御蔵島からノネコを減らすことは、オオミズナギドリや世界的希少種のミクラミヤマクワガタなどの鳥や昆虫の救済に直結します。現在子猫の持出しを実施中。里親になって下さる方はご連絡下さい。

〔講師プロフィール〕

1950 年代生まれ、(公財)山階鳥類研究所鳥学研究室長、評議員を経て、現在、上席研究員。のべ15 年近く鳥学ジャーナル2 誌の編集長を務める。東京農大客員教授。水産学博士。ミズナギドリ類の桁違いの生態に魅了され、ミズナギドリで人生棒に振るなら本望、がポリシー。実験室ワークから飛び出て今世紀はオオミズナギドリ研究の出発地の御蔵島に学生さんを受け入れて研究活動を行った。やむにやまれずに、最大の脅威ノネコ対策に奔走中。

 

第十四回

201510月3日(土) 14:00~16:50 大崎第一区民集会所・第1集会室 観察会は17:45頃終了。

・講   大沢夕志・大沢啓子(おおさわ ゆうし、おおさわ けいこ)さん

・テーマ : 「コウモリの言い分~吸血鬼なんかじゃない~」

〔お話の内容〕

吸血鬼なんかじゃない、逆さなんかじゃない、洞窟なんて嫌いだ、昼間だって飛ぶ、超音波なんて使わない。地球上には1300種ものコウモリがいますから、その世界は多様です。前半で誤解だらけのコウモリのイメージを覆し、後半はコウモリを巡る世界の旅のお話をします。

習: 野学校の講義終了後、ご希望の方々で、目黒川近辺で観察会を行い、バットディテクターを使って、コウモリの声を聞きます。小雨決行です。ただし、当日、コウモリがいないこともあり得ます。

〔講師プロフィール〕  

1998年に南大東島でオオコウモリに出会って以来、世界を巡ってコウモリを観察している。2006年には二人ともサラリーマン生活に終止符を打ち、コウモリに専念。お話会や観察会、企画展示、書籍など様々な機会を通じてコウモリの魅力を伝えることがライフワーク。

 

第十五回

2015124日(金)   1830~21:00

・講   蓮尾純子(はすお すみこ)さん

・テーマ : 「東京湾岸の野鳥を守るー今昔」

〔お話の内容〕

鳥の関係者に「新浜(しんはま)」と呼ばれた行徳・浦安の一帯は、1960年代、「東京オリンピック」や「日本列島改造論」のまっただ中、急激な開発や埋立工事にさらされました。「新浜を守る会」として保護運動にかかわり、その後一角に作られた行徳鳥獣保護区と行徳野鳥観察舎に住みこんで働き、淡水湿地の造成や維持管理に今もかかわり続けています。半世紀の経緯を「坦々と」なおかつ「面白く」お話しできれば・・・と思っています。

〔講師プロフィール〕  

1948年神奈川生まれ、東京農工大学農学部林学科卒、認定NPO法人行徳野鳥観察舎友の会非常勤職員。新浜の魅力にとりつかれてから既に半世紀。夫嘉彪(よしたけ)とともに住込みの管理人として行徳野鳥観察舎に勤務するようになってから、はや40年。あいもかわらず週3~4日、観察舎に出ています。

 

第十六回

2016416日(土)   1400 ~ 1620

・講   土屋 公幸(つちや きみゆき)さん 株式会社応用生物 特任研究員

・テーマ : 日本に生息するネズミ類

〔お話の内容〕

野生ネズミ類を捕獲・飼育し、染色体の研究や新しい実験動物の開発に携わってこられた土屋先生。鳴き声を出す出さないで近縁種の区別ができると知ったきっかけや、雌雄をケージに収容すれば繁殖をする種類と全く繁殖をしない種、出産直後に触ると子供を食殺する種など、多数のエピソードをうかがう。生態に関する野外研究は多くないとおっしゃる先生(実際はアフリカあたりまで採集旅行に行かれている)だが、夜行性でその生態がほとんど知られていない種で、先生の飼育研究により明らかになった事も多いという。近著(後述)の間違い???も、この機会に訂正されたいのだとか。どんなお話が出てくるのでしょう。

〔講師プロフィール〕

1941年生まれ、国立科学博物館第一研究部、国立遺伝学研究所、北海道立衛生研究所、宮崎医科大学などで研究生活を送られ、2002年に東京農業大学野生動物学研究室教授。現在は株式会社応用生物特任研究員。農学博士。野生小哺乳類の染色体・系統分類と実験動物化に関する長年の研究業績により、平成22年度(3)日本哺乳類学会賞を受賞された。著書多数。近著(共著)の飯島正広・土屋公幸著「リス・ネズミハンドブック」文一総合出版は、ネズミ類の種の鑑別に“鳴き声”を記載した初めての書。国立遺伝学研究所時代に、本州のアカネズミがフォッサマグナあたりを境に染色体数が異なることを発見し、衝撃を与えた先生が、いまも新たな驚愕を提供中。

 

第十七回

20167 8日(金) 1800 2050  小山台会館

・講 林 公義(はやし まさよし)さん(元横須賀市自然・人文博物館館長)

・テーマ :「もっと知ろう、魚の生活の不思議」

 〔お話の内容〕

“水と生命(いのち)の惑星”は表面の70%以上が水に覆われており、そこは生命を一番多く育んでいるところでもあります。海の自然観察、海洋生物調査、フィッシュ・ウオッチングなど通して、大きなクジラから小さなハゼまで、「見る」楽しみから、「観る」こだわりが持てるようなつき合い方ができるようになりました。これら生命のざわめき(海洋生態系)と水辺のにぎわい(生物多様性)の話題を基に、ラジオに出演する機会もできました。その中から特に私が感動したいくつかの映像とストーリーを準備しますので、これを機会に「野」だけでなく「海」にも興味を向けていただけると幸いです。

 〔講師プロフィール〕

1947年生まれ。日本大学農獣医学部水産学科卒業。横須賀市博物館に勤務し、横須賀市博物館学芸員、横須賀市自然・人文博物館館長を経て2011年に同館館長を退職。南西諸島でサンゴ礁魚類の生態調査を20年以上続け、日本魚類学会評議委員を歴任、現在は日本大学・北里大学の非常勤講師など。日本安全潜水教育協会でのダイビングによる水中環境教育、ラジオやテレビ放送の番組を通しての教育普及活動にも注力。専門は魚類分類学で、共著書に「日本産魚類検索―全種の同定―」東海大学出版会、「ハゼガイドブック」阪急コミュニケーションズなどがある。日本自然保護協会や日本野鳥の会神奈川支部などでの教育普及活動の功績により、2003年に自然環境功労者として環境大臣表彰を受賞。

 

<特別授業>

2016年10月16日(日)15:30~17:40 ポレポレ東中野

テーマ:原発事故後の福島の「生命」

授業内容: 

第一部  : 15:30~17:00  映画鑑賞        

『福島 生き物の記録 シリーズ4~生命~』岩崎雅典監督 2016/日本/88/群像舎)

第二部 : 17:00~17:40  トークショー 

「岩崎雅典監督&関野吉晴氏、大いに語る」その後の福島の生きものについて大いに語っていただきます。

 

第十八回

20171 21日(土)  1400 ~ 1530 小山台会館

・講   大隅 清治(おおすみ せいじ)さん(日本鯨類研究所名誉顧問・くじらの博物館名誉館長)

・テーマ :「クジラの性態学」

〔お話の内容〕

 クジラは、分類学的にはウシやカバの仲間の「鯨偶蹄目」の哺乳類に属すると同時に、生態学的にはマグロと同じ「完全水生」の動物であります。それ故にクジラは、形態、生態、生理の面で、両者の類似点と相違点を備えています。

 この授業では、クジラに関します幅広い形態、生理、生態の特性の中から、クジラの繁殖の側面に搾って、その特長に関係するいくつかの話題を提供しまして、皆様にクジラを知ることの楽しさの一端を、ご理解頂きたいと考えます。

〔講師プロフィール〕

 1930年群馬県伊勢崎市生まれ。1958年に東京大学大学院博士課程を修了して、(財)鯨類研究所に就職し、1961年水産庁・東海区水産研究所に転職し、水産庁・遠洋水産研究所に移り、1991に同研究所の所長を定年退職した。同年(財)日本鯨類研究所に就職し、理事、専務理事、理事長を経て、現在同研究所の名誉顧問、また、太地町立・くじらの博物館の名誉館長を務める。その間、一貫して鯨類資源生物学の研究に従事し、1962年から2009年まで、国際捕鯨委会・科学小委員会の諸会議に参加した。農学博士。大日本水産会から水産功績者表彰、日本政府から勲四等瑞宝章、ノールエー政府から功労勲章を受賞した。

研究論文約250編を発表した他に、著書に「クジラと日本人」(岩波書店)「クジラを追って半世紀」(成山堂書店)など、訳書に「鯨とイルカの生態」(東大出版会)などがある。

 

 

第十九回

2017415日(土) 14001620    小山台会館  

講 師:中村 司(なかむらつかさ)さん (山梨大学名誉教授)

テーマ:「私の野鳥人生――渡りの研究と、私を支えてくれた人々」

【お話の内容】

中村先生は、蜂須賀正氏侯爵、山階芳麿侯爵、中西悟堂などの先達とのお付き合いをはじめ、GHQのオースチン博士(バードウィークの前身、バードデイを制定)のご子息の家庭教師をされていたなど、今や語れる方がほとんどいない鳥の研究や保護の歴史を経験されています。「渡りはいつ起きるのか?」「長距離を渡るエネルギーは何か?」など、ご自身の研究を最初に紹介していただいてから、皆様からのご質問も交えて、中村先生に歴史を語っていただく予定です。

【講師プロフィール】

1926年生まれ。東京文理大学(現・筑波大学)生物学科卒。カリフォルニア大学、ワシントン大学に留学後、東京教育大学理学博士。その間、山階鳥類研究所嘱託兼職員などを経て、山梨大学教育学部教授。特に渡り鳥の生理学的研究を手がけ、第9代日本鳥学会会頭、国際鳥類保護会議(ICBP)幹事、山梨県自然環境保全審議会会長等を歴任。現在は、国際鳥類学会議(IOC)名誉会長。

 

第二十回

2017729日(土)  14001630 小山台会館

講 師:巌城隆(いわきたかし)さん

テーマ:「寄生虫―その巧妙な生き残り戦略」

【お話の内容】

・寄生虫とはどんな動物か、不思議な形態や生態。

・生き物には寄生虫がいることが普通。鳥類にもいろいろな寄生虫がいる。

・寄生虫も地球の生態系の一員である。…etc.

どうぞ、たくさんの「?」をお持ちください。30年以上にもわたって寄生虫研究を続けていらした先生のたくさんの引き出しの中から、どんな思いがけない答えを伺えるか、今からとても楽しみです。

【講師プロフィール】

目黒寄生虫館研究室長。1963年生まれ,北海道札幌市出身。1986年北海道大学獣医学部卒業。同大学院獣医学研究科修士・博士課程修了。北海道農業共済組合連合会,鳥取大学医学部附属動物実験施設などを経て,2005年から目黒寄生虫館に勤務。2016年から同研究室長。専門は哺乳類・鳥類の寄生蠕虫類の形態・分類の研究。特に口も肛門もない条虫類(サナダムシの仲間)が好き。